ロバート・シラー:ロボット税に賛成

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ロバート・シラー教授が人間だけでなくロボットにも課税しようというアイデアに賛意を示している。
その主張からは、格差問題への不作為を続けてはいられないとの焦りが感じられる。

ロボット税のアイデアはそもそも欧州議会で提起されビル・ゲイツ氏が賛同したことで注目を浴びた。
ロボット等による自動化で職を失う労働者の支援・訓練の財源のためロボット税が提案されたのだ。
これに対し、ローレンス・サマーズ元米財務長官はロボット税の3つの難点を挙げて「見当違い」との見解を述べている。
サマーズ氏の議論は理屈に適ったものではあるが、見方を変えると《難点を挙げつらい実行しないエリートの思考回路》と言えなくもない。
これは昨今、世界中でポピュリズムを招いた一因でもある。

シラー教授はProject Syndicateへの寄稿で、ロボット税に対する反対意見の優勢を認めながら、賛意を示している。
ロボットやAIによる省力化が今後も進めば、ロボット税を求める声は大きくなっていくだろうと予想する。

「ロボットへの課税は少なくとも一時的には(省力化)プロセスを鈍化させ、失業者の再訓練などの財源を与えてくれると提唱者は期待している。」

シラー教授はロボット税が省力化による生産性向上を鈍化させることを認めた上で、あえてそうするべきと主張している。
難はあるがとにかく行動しようという考え方とも言える。
教授がこう主張するのは、省力化で発生する失業問題の根の深さを懸念するからだ。
エドムンド・フェルプス教授を引き、こう説明する。

「多くの人が家族を支えるための仕事を見つけられなくなるとさまざまな問題が起こり、フェルプスが強調するように『共同体全体の機能が阻害され』てしまう。
言い換えれば、ロボット化には政府による介入を正当化するだけの外部性があるということだ。」

シラー教授は、格差問題への緩和にどのような選択肢があるのかを考えるべきという。
ベイシック・インカムや富裕層への重い課税は富や所得の再分配に寄与するはずだが、政治的な支持を得にくいとの現状を指摘する。
税を多くとられる層が反対するだけでなく、給付を受ける側からも反対が多いのだという。
困っている人たちが得たいのは施しではなく、フェアに働く機会なのだ。
これに比べれば、ロボット税は社会から受け入れられやすいはずと教授は期待する。
ロボット税は「自然な公平感に馴染みやすく、結果、長続きするだろう」という。

ロボットと言えば、作るのも使うのも日本のお家芸だ。
この問題は海の向こうの話とは言えない。
日本では米国以上に自動化・省力化が良いことと受け取られがちだ。
国際競争力を保つため受け入れざるをえなかったからだし、労働者も従順だった。
自動化・省力化のほとんどが資本集約的な企業体質を要求するから、結果として資本への富の分配を増やし、富の偏在を助長しやすい。

仮に先進国がロボット税を導入しても、工業化の進む新興国が導入しなければ、先進国の製造業は仕事を奪われ税収も増えないかもしれない。
その意味で疑問符のつくアイデアであることは確かだ。
しかし、その疑問符のために(ベイシック・インカムや累進課税等を含めて)何も行動しないのでは、格差を拡大させてきた過去数十年を繰り返すことになりかねない。