ロバート・シラー:バブル崩壊の条件は満たされていない

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資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、米株式市場のクラッシュの可能性は高くないと書いている。
株価は高位にあるものの、市場心理が過去の主なバブル崩壊時と異なっているとの主張だ。

今のところ重大な心理的次元において、株式市場は危険な1929年・2000年の市場とは似ていない。
これはクラッシュの危険がないというわけではない。
しかし、しばらくの間はスパイラルな下げの心理的前提条件は実現しないようだ。

行動経済学者として市場の振る舞いを見つめてきたシラー教授はThe New York Timesへの寄稿で、市場暴落の可能性について検討している。
1929年とは米国が大恐慌の引き金を引くこととなった大暴落の年だ。
2000年はドットコム・バブルが崩壊した年だ。
シラー教授は、現在・1929年・2000年について、株価バリュエーションと市場の集団心理の2面から比較検討している。

バリュエーションについては、FP読者であればよく理解されていよう。
シラーのCAPEレシオ1929年・2000年に次いで高い水準にある。
バリュエーション信頼感指数で見る投資家の市場バリュエーションへの評価は2000年前後以来の割高感を示している。

Robert Shiller教授によるCAPEレシオ
Robert Shiller教授によるCAPEレシオ

「現在の(高い)バリュエーションは市場を脆弱にしている。
しかし、過去恐ろしい下落を引き起こしたのは、高いバリュエーション指標だけではない。
もう一つの材料は集団心理だ。」

シラー教授は3つの年の前後について新聞記事を丁寧に調べている。
経済・市場・投資家についてどんな記事が書かれているのか。
バブルが生成する過程では、まさに「根拠なき熱狂」というべき投資狂の記事が並ぶ。
崩壊が近づくと、それに対する危機感を露わにする記事がどんどん増えていく。
では、現在はどうなのか。

「集団心理は別の冷静なところにあるようだ。
投資家は、1929年・2000年のように他の投資家が突然持株を売って市場から去ってしまうというような心配はしていないように見える。」

もちろん、心配が何もないわけではない。
借金による投機、FAANGブーム、ビットコイン・バブルなどは確かにあるが、あるものは過去のバブルに比べて規模が小さく、あるものは人々が心配していない。
つまり、大きなバブルが存在するとか、それが崩壊するとか予想するには、一つ材料が足りないようなのだ。
しかし、だからと言って、シラー教授自身が言うように、教授の予想を信じ切ってはいけない。

優れた予想者が未来を予想すれば、それが未来を変えてしまう。
シラー教授が信頼を集めている時、教授がリスクが高いと言えばリスクは下がる。
教授がリスクが低いと言えば、逆にリスクを高めてしまうかもしれない。