レイ・ダリオ:いつでも売れるものにしておけ

Bridgewater AssociatesのRay Dalio氏は、投資環境が「異常なまでに不透明」になったと顧客に伝えている。
いつでも逃げられるように、売りやすい資産に分散投資するよう勧めている。

トランプ大統領の入国禁止令は世界を揺るがした。
諸外国は非難の声明を発し、連邦政府の司法長官代理は反旗を翻した直後に解任された。
米社会には戸惑いと反対の声が溢れている。
一方で、欧州メディアの中には米国民の過半が同大統領令を支持していると報じるものもある。
真偽のほどは定かでないが、いずれにせよ根の深い問題であることを表している。

日本は元々先進国の中でもとりわけ偏狭な移民政策をとってきた国だから、この政令とそれが及ぼす帰結について想像するのは難しい。
しかし、トランプ・ラリーで幸福感を味わってきた日本人にも冷水が浴びせられたのは間違いない。
トランプ氏の選挙公約があまりにも荒唐無稽だったため、そうした部分を聞き流し、相場にいい話ばかりを聞き入れていた。
そういう人たちは今つぶやいているはずだ。
《まさか・・・、あいつ本気だ・・・》と。

ブリッジウォーターのダリオ氏とBob Prince CIOが昨日顧客に送ったメモをBloombergが報じている。
ダリオ氏は、投資環境が「異常なまでに不透明」と指摘し、投資家が注目すべきポイントが変化したと注意を喚起する。

「現在、経済・市場・私たちの幸福にとって重要なのは、通常の主たる要因(金融政策など)より、(米社会の)バランスがどれだけ変化するかになった。」

ダリオ氏は、トランプ政権の二面性を認めている。
経済・市場にプラスに働く財政政策・構造改革を実行する可能性があるとする一方、ポピュリズムによって世界経済を傷つけるリスクもあるという。
さらに、トランプ政権には1930年代のポピュリスト政権と似た部分があるという。
言うまでもなく、大恐慌を招いた政権だ。

「国家主義、保護主義、軍国主義は世界の緊張と対立のリスクを高める。
私たちは偏見を持たない立場ではあるが、以上の理由から、明らかになりつつあるトランプ政権の政策について懸念を募らせている。」

ダリオ氏はトランプ勝利が決まった直後、「極度にあいまいで面白い時代」と表現し、不安を抱えながらも期待感も示していた。
しかし、時間が経つにつれ、ダリオ氏はトランプ大統領のポピュリズムに懸念を募らせる。
1930年代に言及し、選挙直後より悲観を強めている。
ダリオ氏は不透明な投資環境を勘案し、一点賭けを避けるべきという。
いつでも売却できる流動性の高い資産に分散投資することを勧めている。
こうした推奨を聞いて、リーマン危機を思い出した人も多いだろう。
流動性が厚いと思われていた市場が突如干上がって、売れるはずのものが売れなくなることがある。

スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏は、今月の月例書簡でシカゴ大学のLuigi Zingales教授の言葉を紹介している。
「プロ・ビジネス」と「プロ・マーケット」は異なる概念だという。

  • プロ・ビジネス: 国内企業を優遇によって守る。
  • プロ・マーケット: 国内市場を開放し、消費者に恩恵をもたらし、企業に競争力向上を促す。

プロ・ビジネスは将来世代のコストで現在世代を救うため、結局は経済を害することになる。
守られた国内企業は競争力向上の努力を怠り、結局は衰退していく。
言うまでもなく、トランプ政権の政策はプロ・ビジネスだ。