リチャード・クー:FRB再投資停止の本当の意味

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野村総研のリチャード・クー氏がFRBのバランスシート縮小のインプリケーションについて議論している。
FRBの再投資停止は資金を市場から恒久的に吸収するため、金利上昇要因になる点を強調している。

「財務省は、借款債を民間セクターに割り当て調達した資金をFRBに支払う。
この資金は実質的に消滅し、二度と債券市場に還流しない。
この目的で発行された借款債の市場への影響は、財務省が赤字国債を発行したりFRBが債券を売り戻したりするのとまったく同じだ。」

クー氏が最近公表したレポートの内容をFTが伝えている。
FRBは3度に及ぶQEによってバランスシートを膨らませてきた。
テーパリング終了後は、償還にかかる保有債券と同程度の額を国債等に再投資している。
こうして、しばらくFRBのバランスシートは横ばいを続けてきた。
それを今、再投資を停止することで縮小しようとしている。

クー氏の論点は、再投資の停止が赤字国債の新規発行と同じ効果を持つということ。
いわゆるクラウディング・アウトである。
クー氏によれば、仮に再投資停止が今年10月に始まるなら、2018年に3,000億ドル、2019・20年に6,000億ドルずつ必要だという。

「6,000億ドルという数字は2016年の連邦財政赤字にほぼ等しい。
市場がパニックに陥らないとしても、このプロセスは大きな金利上昇圧力となり、債券価格は急落しかねない。」

ただし、クー氏はこうした影響も、市場参加者が気づかない限りは顕在化しないという。
現実に市場から資金が吸い上げられていっても、市場がそれに気づかない限りは債券価格の下落も限定的で済むというのだ。
ギリシャ危機の際に、新政権が粉飾を公表するまではギリシャ国債の利回りが低位で安定していたことを傍証に挙げている。

さすがに、米債券市場の参加者がクラウディング・アウトにまったく気づかないというようなことはなかろう。
むしろ、ありうるシナリオは、再投資が一気に停止されるのではなく、相当な時間をかけて減らされていくシナリオであろう。
それでも楽観視はできまい。
たとえば、6,000億ドルの財政赤字に比べて、年6,000億ドルではなく600億ドルであっても、無視できる話ではないように聞こえるのは筆者だけだろうか。