ラグラム・ラジャン:金融引き締めと資産価格下落ペース

ラグラム・ラジャン
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前RBI総裁、ラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、金融政策の正常化について心配事を説明している。
ゆっくり慎重に正常化を進めるつもりでも、場合によっては急激な引き締めを余儀なくされる可能性があるのだという。

「政策とともにファンダメンタルズの組み合わせが市場を拡大させているのは間違いない。
・・・
可能な時にFRBが政策を正常化させるのは重要なことだ。
さもないと、市場はFRBの次の手を憶測し、混乱を生みかねない。」

ラジャン教授はシンガポールStraits Timesにこう語った。
2005年のジャクソンホールで金融危機を予想し、ローレンス・サマーズ氏をはじめとする大勢から失笑を買った経験のある教授は、慎重な言葉遣いで話した。

FRBの金融政策正常化については3つのシナリオを想定しているという:

  • ベスト・シナリオ: ファンダメンタルズがいい方向に変化し、現状の資産価格が正当化される。
  • ミドル・シナリオ: 混乱なく資産価格がファンダメンタルズにサヤ寄せして下落する(おそらくコンセンサス)。
  • ワースト・シナリオ: 資産価格調整が急になり、ボラティリティが大きく上昇する。

ラジャン教授は懸念を漏らす。

「各国中央銀行はミドル・シナリオに向けて動くようだ。
最近のFOMC議事要旨で、FRBバランスシート縮小は常に監視しながら行うと書かれているのはそのためだ。
問題は、修正の難しい市場イベントが起こってしまわないか、ということだ。」

「修正の難しい市場イベント」とは何を指すのか。
ラジャン教授は、予想外のインフレ昂進を例に挙げた。
ほぼ完全雇用にある労働市場が起因となって予想外に大きな賃金上昇が進み、インフレ期待が上昇する場合だ。
想定を上回るインフレが問題視されれば、中央銀行は想定を上回る金融引き締めを検討せざるをえなくなる。
想定外の引き締めならば、経済・市場は打撃を受けるだろう。
ミドル・シナリオを想定したはずが、ワースト・シナリオに近づいてしまう。

「私たちは、主たるシナリオとは逆に、こうした想定外のことを心配しておくべきなのだ。」

想定外のシナリオは、為替にも関係してくる。
想定外のインフレ上昇は想定外の自国通貨安の要因となる。
この程度がほどほどならば喜ぶ国も多いだろうが、度を超すと話は逆転する。
通貨防衛のために想定外の引き締めを余儀なくされれば、そこでも資産価格には大きな打撃が及ぶだろう。