ラグラム・ラジャン:リスクは他のところに移っただけ

ラグラム・ラジャン
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インド中央銀行総裁を昨年9月に退任したラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、リーマン危機後のリスクの所在について語った。
米銀は安全になったが、その分、他のセクターにリスクが移っただけと指摘した。

「稲妻が2度同じところに落ちないのはほぼ間違いない。
おそらくみんな用心するからだ。」

ラジャン教授はCNBCで、リスクが去ったわけではないと話した。
政府による金融監督、FRBが進めている金融政策は「おそらく正しい」としながらも、それだけでリスクが消えてなくなるわけではないからだ。

「銀行はかつてよりはるかに安全になった。
問題は、経済における全体のリスク水準が大きく低下したわけではないことだ。
銀行を安全にすれば、リスクは他のところに移る。」

リーマン危機後に制定されたドッド・フランク法は窮屈なほどに銀行を規制した。
銀行の収益機会は狭まったが、引き換えに安全は高まった。
しかし、過去に銀行が抱えていたリスクの一部は、当局の監視のとどかないシャドウ・バンクへと移転した。
結果、金融システム全体のリスクはさほど減っていないかもしれない。

米金融のリスクを感じさせる一例は、政府の学生ローンの債務不履行だ。
米政府は2010年、学生ローン事業を民間から引き継いだが、その後も債務不履行が大量に発生し社会問題化している。

「(FRB)利上げの前でさえ重大だった。
(学生ローンの)中に変動金利のものがあり、金利がさらに上昇するとしたら何が起こるだろう。」

債務不履行の債務者が4.2百万人とも言われるこの学生ローンは、連邦政府からの直貸しだ。
シャドウ・バンクと言えなくもないが、決してシャドウに隠れた問題ではない。
では、シャドウに隠れた問題は本当に存在しないのか。
ラジャン教授は新たな火種を指摘する。

「世界の環境が(金融)引き締め的になるにつれ、その影響が市場に広がっていくのかが問題になる。
市場は過去そうした成り行きを経験してきていない。

金融危機を回避できた国もあるが、それ以来、市場は大きく上昇した。
オーストラリア・カナダの住宅市場などだ。」

リーマン危機後の非伝統的金融政策は、誰も経験したことのない規模のものだった。
それでも金融緩和の間はいいことばかりだが、引き締めとなると悪いことも起こる。
誰も経験したことのないプロセス、しかも悪いことがともなうプロセスに突入するのかもしれない。
天井知らずに上昇した資産価格に何が起こるのかは想像に難くない。

ラジャン教授は、世界の政治的リスクについて次のように評価している。

  • 欧州: 重要な選挙を消化し、リスクは低下。
  • 米国: 政権が選挙用のレトリックからある程度修正を進め、リスクは低下。
  • 中国: 避けて通れない構造改革を進めており、金融引き締めが行きすぎれば大きな悪影響を及ぼす。