ラグラム・ラジャン

ラグラム・ラジャン:インドの高額紙幣廃止は拙速

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RBI(インドの中央銀行)前総裁、ラグラム・ラジャン シカゴ大学教授が、出版予定の著書『I Do What I Do』の中でインドの高額紙幣廃止について回顧している。
インドのモディ政権は、ラジャン氏がRBI総裁を退任した直後の昨年11月、一夜のうちに紙幣を廃止して世界を驚かせた。

「2016年2月、政府から紙幣廃止についての意見を求められ、口頭で返答した。
長期的にはメリットがあるものの、予想される短期的な経済的コストがそれを上回り、主たる目標を達成するためによりよい代替手段がありうると感じたからだ。」

ラジャン教授が新著で明かした裏話をBloombergほか多数のメディアが伝えている。
世界中からその高い見識について賞賛を受けてきた前総裁だが、それだけに政府との意見の相違は大問題だったようだ。
この問題が前総裁の重任を不可能にした一因と報じられている。
優れた前総裁の反対は、政府にとって大きすぎる壁となってしまったのだ。

結果はラジャン前総裁が危惧したとおりになった。
経済からマネーを吸い上げる政策とは、強烈な短期的金融引き締めを意味する。
インド経済は縮小に転じることとなった。

「もしも政府がメリット・デメリットを考えてそれでも紙幣廃止を実施する場合のために、RBIは必要な準備と準備にかかる時間を記した文書を提出した。
RBIは、準備が不十分な場合何が起こるか警告していたんだ。」

インドの地下経済は巨大だ。
掃討のために新紙幣切り替え・高額紙幣廃止が実施される意義は大きい。
しかし、十分な新札の用意さえなく行われた高額紙幣廃止は蛮勇でもあり拙速でもある。

犯罪・脱税防止と金融政策の2面から高額紙幣廃止を主張しているハーバード大学ケネス・ロゴフ教授は、そうした政策を実施するのに5-10年の準備期間が必要と話している。
中央銀行より政府の役割の大きな作業となるが、インドの場合その政府がずいぶんと乱暴なやり方に走ったようだ。