ラインハート:借金優遇が不均衡を助長する

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著書『国家は破綻する』で有名なハーバード大学Carmen M.Reinhart教授が、世界経済の不均衡について懸念を示した。
米国の慢性的経常赤字は従来のやり方では解決しないと批判している。

税制は家計による債務積み上げを有利にし貯蓄を不利にしてきた。
・・・
他に選択肢がないために、世界の準備通貨としてのドルの地位が揺らぐことはなく、米国が経常赤字をファイナンスし続けるのを容易にした。
しかし、容易である事実はそれを良策にはしない。

ラインハート教授がProject Syndicateで米国の慢性的な経常赤字とそれに対する誤った処方箋について懸念している。
米国の経常赤字は1980年代に始まった。
それまでは、むしろ米国は経常黒字国だったのだ。
ところが、準備通貨の恩恵が米国を変える。
準備通貨は世界の経済成長と調和した供給量拡大が必要となるため、小幅な経常赤字・緩やかな通貨安は都合がよい。
これが、米国の自助努力へのインセンティブを削いでしまった。

米国の経常収支対GDP比率
米国の経常収支対GDP比率

1980年代半ば、米経常収支が急激かつ大幅に悪化すると、まず槍玉に挙がったのは日本だった。
貿易摩擦が高まり、日米は市場原理に基づかない解決方法を選ぶ。
これと同じ構図が韓国、中国と繰り返し、最近ではドイツやメキシコなども非難のターゲットとなっている。
米国が経常黒字国を非難し理不尽な条件を突きつければ問題は解決するのだろうか。
ラインハート教授は、かつて米国が黒字国だった頃の事実を紹介する。

「ジャクソンホールでの議論で、誰かが尋ねていた。
黒字国に支出を増やし貯蓄を減らすよう国際的なプレッシャーをかけられないかと。
同じ問いかけが第二次大戦後の黒字の時代に米国に向けられた時、心配事は世界的なドル不足だったが、明確に否定された。」

米国にとっては、常に問題は米国以外のところにあるようだ。
そして、本質的でない解決法のしわ寄せは為替レートにも及ぶ。
米国の経常赤字が悪化を始めてすぐの1985年、プラザ合意が成立したのが象徴的だ。

米国の経常収支対GDP比率とドル円
米国の経常収支対GDP比率とドル円

米国が本質的な解決法を模索しない限り、趨勢的なドル安が続く可能性が拭えない。
本質的な解決法とは貿易収支を改善するような構造変化であり、投資の大部分を国内資金で賄えるような貯蓄投資バランスの改善だろう。
トランプ政権がこれまでやってきたのは、残念ながら持続性に疑問のあるツイッター指令だけ。
貯蓄投資バランスについて言えば、まったく姿も形もないのである。
法人減税は、米貿易収支・経常収支を改善できるだろうか。
そうした議論こそ少し長い目でみた為替相場の方向性へのヒントを与えてくれるはずだ。