メディアの役目、政治の度量

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今月6月8日午前の菅官房長官の定例記者会見は、日本のメディアにかすかな期待を残すものだったように思う。
この会見からほどなくして、文科省は、官房長官が「怪文書」と表現した文書についての再調査に動き出した。

この日、官房長官を完膚なきまでに叩きのめしたのは東京新聞社会部記の望月衣塑子記者だ。
ただでさえ異例に長くなった質疑時間のゆうに半分以上をとり、加計問題などについて論理だった質問をした。
文科省が「出所や入手経路が明らかでない」ことを理由に「怪文書」について再調査は行わないと判断したと官房長官が繰り返してもあきらめることはなかった。
公益通報者保護制度における「公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン(内部の職員等からの通報)

(8)匿名による通報の取扱い
各行政機関は、通報に関する秘密保持及び個人情報保護の徹底を図るとともに、通報対応の実効性を確保するため、匿名による通報についても、可能な限り、実名による通報と同様の取扱いを行うよう努める。
この場合、各行政機関は、通報者と通報窓口担当者との間で、適切に情報の伝達を行い得る仕組みを整備するよう努める。

を読み上げ、官房長官が口にした「法治国家」という主張を逆手に「法治国家というのであれば」とやり返す場面さえあった。

一方、望月記者はいくつか些末な質問もしている。
その姿勢は徹底しており、官房長官が否定しそれに疑わしい点がない時には二度と繰り返すことをしない。
風説があるから聞くだけは聞くが、おかしなところがなければ少なくともいったんそのテーマは引き下がるのであろう。

菅官房長官は間違いなく優れた政治家・官房長官だ。
それは日頃の言動からも十分にうかがわれるし、報道などでも一致するところだ。
出来の悪い閣僚の多い現政権で屈指の政治家であることは間違いない。
その官房長官が完全にやり込められたと言ってよい。
その結果は「怪文書」の再調査だ。

菅官房長官がやり込められたのは、望月記者の手柄であるとともに、官房長官本人の見識によるものだろう。
小者やダメ大臣なら、会見で問われたことの本質さえ理解できなかったかもしれない。
見識のある官房長官ゆえ、本質を理解し、結果起こることを予想し、顔を歪めることになったのだろう。
この会見から再調査への動きは、もしかしたらまだ自民党に期待してもいいかもしれないと感じさせるものだった。

一方で、官邸の最高レベルは、通常国会閉幕の記者会見で論点を外した謝罪をした。
どうせ謝罪するなら本質について謝罪すべきなのに、この人の幼児性がそれを許さない。

官邸の記者クラブ所属の記者たちも何をしているのかと首を捻る。
いろいろ言い訳があるのだろうが、会見の様子を見る限り、予定調和の質疑とパソコンをたたくことが記者の仕事なのだろうか。
今回の会見を実り深くしたのは、東京新聞の社会部の記者であり、それに同調したのはジャパンタイムズだけ。
長らく言われていることだが、硬直的で馴れ合い的な日本のメディアには何らかの変化が必要であるようだ。

現政権は安保法案、共謀罪と選んではいけない進め方を選んでしまった。
それなのに安保法案後にも国民は自民党を支持した。
残る憲法改正の前に同じことを繰り返すのだろうか。
野党に受け皿がないから自民党を支持してしまうのか。
フランスのような奇跡が起こるのか。
そうなるまで自民党左派は隷従を続けるのだろうか。