マーティン・フェルドスタイン:好景気と資産価格の死角

ホワイト・ハウス

民主党・共和党両政権で要職を務めたMartin Feldsteinハーバード大学教授が、好調な米経済に潜むリスクについて書いている。
好調な経済は金融緩和の巻き戻しを意味し、これが市場・経済に及ぼす悪影響への対処を米政府・FRBは迫られるという。

フェルドスタイン教授はProject Syndicateで、力強い回復を見せる米経済について論じている。
趨勢的停滞論はもはや過去のものとし、完全雇用、物価上昇、家計の信頼感、製造業・住宅着工の拡大などを挙げて、実質GDPの改善は2017年いっそう速まると予想する。

「貿易・在庫の数字のばらつきが最近のGDPの数字を押し下げてきたが、よりよくファンダメンタルズを示す民間購入者への最終売上は、実質年率約2.5%で上昇してきた。
2017年のGDPは、全体として同様の率で増加するだろう。」

フェルドスタイン教授は、一方で大きなリスクを指摘する。
現時点でこそ経済は健全だが、同時に脆弱でもあるという。

「米国はこの10年間、過度な低金利を経験し、高い利回りを求める投資家・貸し手にあらゆる資産の価格を押し上げさせ、リスクの高いローンを貸し出させた。
危険なのは、この割高な資産・高リスク・ローンの価値が失われ、経済停滞をもたらすことだ。」

米市場には現在、海外から見れば少々奇妙に感じられるほどの楽観が満ちている。
トランプ大統領誕生というあまりにも強烈な出来事があったために、経済回復の本質を忘れてしまったかのようだ。
トランプ・ラリーはトランポノミクスへの期待だけが生んだ株価上昇ではない。
そもそも米経済はトランポノミクスがなくとも回復基調にあり、トランプ勝利はそのファンダメンタルズを市場に伝播するカタリストとしても働いた。
米市場はここまでは正しく認識しているようだが、その先を忘れてしまっている。

米経済はどうして回復したのか。
財政政策のためか、構造改革のためか。
この2つの可能性は過去について言えばNoであり、未来についても疑問符がつき始めている。
では、過去の経済回復は何によるものか。
金融緩和であり、時が経済を癒したのであろう。
そして今、金融緩和が巻き戻す時が来た。

FRBのバランスシートを膨らませたままでいいなら、あるいは、FRBが再投資をしなくても金利が上昇しないのなら、FRBはうまく切り抜けることができるのかもしれない。
それはあまりにも楽観的な見通しであり、実際にはFRBはインフレ昂進を許容するか、金融引き締めを進めるかの選択を迫られるだろう。
FRBは後者に踏み出しており、山あり谷ありではあろうが金利は上昇に向かう。
金利を下げて改善した経済が、金利を上げても巻き戻しを逃れるというのは少々虫が良すぎる。
金利が下がったために上がった資産価格は、金利が上がれば下がるだろう。
金利が下がったから貸せた高リスク・ローンは、金利が上がれば焦げ始めるかもしれない。

フェルドスタイン教授は、こうした悲観的シナリオが回避される可能性も残っているという。
金利が正常な水準に戻り、資産価格が徐々に調整する可能性だ。
それでもリスクはリスクだという。
教授は、「これが、FRBやトランプ政権にとって、今後1年の主たる課題になるだろう」と結んでいる。