ベン・バーナンキ:FRBと市場の温度差

ベン・バーナンキ前FRB議長が先月のFOMCの決定について検証している。
FRBの意思決定を支持する内容だが、意思決定が正しくとも問題が払拭されるわけではない。

バーナンキ氏は自身のブログの中で重要な問題提起をしている。

「どのようにFRBはその計画に財政政策を勘案したのか?
FRBと市場とで選挙後の財政政策の見通しの変化に対する反応が大きく異なるのはなぜか?」

この点は多くの市場関係者からも指摘されていたことだ。
トランプ・ラリーと言われるように、市場はトランプ次期大統領の減税・歳出拡大に熱狂している。
一方、FRBはどう反応したか。
先月のFOMC後に公表された経済見通しはほとんど変化がなかった。
ところが、2017年の金利予想(ドット・プロット)の方は、前回の2回から3回に引き上げられている。
経済見通しを上方修正せずに利上げ見通しを上方修正するという現象が起こったのである。

それでも、劇的なトランプ・ラリーと比べれば、FRBの見通し変更は小さなものだ。
これを指して「FRBは後手に回っている」と懸念を示す市場関係者も少なくない。
バーナンキ氏は、こうしたFRBの姿勢を次のように解説している:

  1. 大きな不確実性に直面すると、FRBの政策決定者は用心深いアプローチをとりがちだ。
  2. 現時点でわかっていることに基づくと、仮に重要法案が通過したとしても、財政政策の変化が短期的にマクロ経済に及ぼす影響が大きいかはわからない。
  3. 他の政策変更も経済に効果を及ぼし、それが財政政策の効果を強化したり相殺したりしうる。
  4. 資産価格の変化は、財政政策が成長ペースに及ぼす効果を限定してしまうかもしれない。

こうした事情からFRBはメイン・シナリオを据え置いたとバーナンキ氏は解説する。
一方で財政政策の可能性を認め、それを「上振れリスク」として表現した。
資産価格や金利はFRBの先を行って上昇を始め、それがドット・プロットの上方修正につながったのだ。

バーナンキ氏が太鼓判を押したFRBの政策だが、「FRBは後手に回っている」との声は間違いなのだろうか。
米国の10年もの実質金利(赤)、コアコアCPI(緑)、10年BEI(青)を見てみよう。

米10年実質金利、コアコアCPI、10年BEI

都市部のコアコアCPIはすでに2%を超えて推移している。
秋口から市場のインフレ予想(BEI)は上昇し、2%弱で高止まりしている。
実質金利はトランプ勝利後上昇を始め、12月のFOMC直後にピークを打った後、下落に転じている。

選挙後の実質金利上昇は、次期政権の成長戦略が実質成長率を押し上げるとの期待を反映したものだろう。
その後の下落は、市場が冷静になりつつあることの現れかもしれない。
問題は、インフレ期待が高止まりする中での実質金利の低下だ。
金融市場が緩和的な環境に戻るのであれば、高止まりするインフレの中でブレーキを緩めることになる。