ピーター・シフ:本当の財政の崖は金利上昇後にやってくる

ピーター・シフ

Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏が、持論のFRB主犯説を主張した。
独特のシフ・ワールドを展開し、インフレと金利上昇のリスクを警告した。

シフ氏がMSNBCの討論番組で吼えた。
闘争心の塊のような男は、よどみなく早口に自身の主張をまくし立て、躊躇うことなく他の参加者の発言に噛みついた。
明らかに認知に偏りの見られる同氏ではあるが、一面の真理を突いているのも確か。
発言の中からいくつか興味深いところを紹介しよう。

米連邦政府の財政について:

「(本当の)財政の崖とは、金利が急騰して、過去数年積み上がった巨額の債務の金利を政府が払えなくなった時のことだ。」

シフ氏の考えでは、米国は財政従属に陥っているという。
つまり、FRBの低金利政策なしには米財政は立ち行かず、この事実がFRBに正しい金融政策の実行を許さないという。

「共和党員の多くは、FRBが長らく間違ったことをやった後に正しいことをすれば、どれほどひどいことになるかわかっていない。
ついに金利上昇を許せば、レバレッジの効きすぎた国は重大な問題を抱える。
政府は巨額の債務を抱えてデフォルトせざるをえない。」

シフ氏にとっては、諸悪の根源はFRBなのだ。
確かに、米経済に様々な歪みが生じるのにFRBが果たした役割は無視できまい。
しかし、FRBを主犯とするシフ氏の態度は、なぜそう思うようになるのかさえ理解しがたい。

「あまりにも長く低金利を維持したために経済がめちゃくちゃになった。
貯蓄は足りず、生産も足りない。
サービス・セクター、政府、銀行、小売り、医療、教育に従事する人が多すぎる。
一方で、私たちが消費するものも生産できない。
資源配分が適切でないために経済が機能せず、毎月500億ドルの貿易赤字を出している。
元に戻すのには痛みを伴うが、そうしなければ、2008年が天国と思えるほどのリアル・クラッシュが起こるだろう。」

FRBを主犯とするのは酷だ。
FRBがよくない変化を助長したのは事実かもしれない。
(逆も真としてやるべきだろう。)
仮によくない部分だけを取り立てて非難するとしても、主犯を陰で支えた悪の資金源といったところだろう。

米経済のサービス化をFRBが後押ししたというのも無理がある。
サービス化の原因は、かつて米国が自ら選択した自由貿易であろう。
そして、今さらFRBが金融政策を正常化したところで「米国が消費するものを生産できない」状況が反転することはない。
また、そうする必要もないはずだ。

「インフレは制御できなくなる。
インフレは経済を荒廃させる。
FRBは今度はインフレを封じ込める手段を持たない。」

政府の利払い負担を増やせないため、FRBに許された利上げ幅は大きくない。
仮にインフレが高進しても、この状況には変わりがなく、インフレ高進を許容せざるをえないかもしれない。
これを防ぐには、あるいは事後に対処するには、緊縮財政が選択されるのだろうが、その即効性はいかほどだろうか。

FRBは景気停滞を恐れて利上げを急いできた。
次の景気停滞期までに利下げ余地を作っておこうという考えだ。
残念ながら、昨年4回予定していた利上げは1回しか行われなかった。
その1回の利上げを決定した12月のFOMCでは「上振れリスク」が指摘された。

「上振れ」という言葉を楽観的に捉えてはいけない。
上振れに対処するのにFRBが持つ手段が限定的とすれば、上振れを喜んでばかりはいられないのだ。