ピーター・シフ:トランプはブッシュJr.の後追いに

Euro Pacific CapitalのPeter Schiff氏が、レーガン政権発足時と現在を比較している。
状況が似ているのはレーガン政権ではなく、ブッシュJr.政権だと指摘し、インフレ・ドル安・金上昇を予想した。

トランプ・ラリーが進む中、シフ氏はpodcastで、過去の共和党政権とトランプ政権とを比較・分析している。
シフ氏はまずレーガン政権発足時と比較する。

レーガン政権発足時 今回
インフレ すでに高インフレ 低インフレ、今後上昇を期待
金利 ボルカー・ショックで超高金利、これ以上上がりようがない 超低金利、上がるしかない
株価 1966-1982年の弱気相場を受け、安値圏 市場最高値圏
 政府債務 余裕あり 余裕なし

環境は大きく異なっているとし、政府財政についても「借入余力があり金利も高かったため民間に国債を売ることができた」レーガン政権時とは大きく異なると分析した。
ちなみにレーガン大統領が初めて大統領選に勝利した時、市場は先行して上げ始めたが、1月も経たないうちに弱気相場に転じている。

レーガン政権発足時の株価
レーガン政権発足時の株価

(次ページ: ブッシュJr.政権との類似)

シフ氏はブッシュJr.政権との類似の方が大きいと言う。
不運もあって米政府の財政を大幅に悪化させた政権だ。

「8年間のクリントン政権後、ブッシュ第43代大統領が就任した時、市場は湧いた。
しかし、クリントン時代に膨らんだバブルはもう萎んでいた。
そこでブッシュが行ったのは減税と財政支出拡大だ。」

米連邦政府の債務対GDP比率
米連邦政府の債務対GDP比率

シフ氏は、財政出動・財政悪化が進んだブッシュJr.政権下でも株式市場が下げた点を指摘する。

「ブッシュ政権で上がったのは金、原油、新興国市場だ。
ドル安が進んだためだった。
クリントンの2期目に発生した米ドル・バブルは、ブッシュJr.の1期目・2期目で萎んだ。」

クリントン・ブッシュJr.政権下の株価、金価格、原油価格、ドルの実効為替レート

青:米国株赤:金緑:原油は2001年1月19日を100とする指数。紫:ドルの実効為替レート

シフ氏はブッシュ政権下で萎んだ米ドルバブルが、オバマ政権2期目に再膨張したと指摘する。
下のグラフを見ても、今はかなりのドル高だ。
トランプ氏がブッシュJr.の後追いをすれば、gold bug(金の信仰者)の時代が訪れるとシフ氏は期待する。

オバマ政権下のドルの実効レートと金価格
オバマ政権下のドルの実効レートと金価格
青:ドルの実効為替レート赤:金

「ブッシュJr.と同じことをして財政赤字を拡大させれば、米ドル・バブルははるかに急速に萎み、金の強気相場が再開するだろう。
投資家が考えているのと逆のことが起こる。」

(次ページ: 予想以上のインフレがやってくる)

シフ氏は、米経済全体が金融緩和のおかげで成り立っていると見ている。
金利上昇による景気押し下げ効果はトランポノミクスの刺激策の効果を上回るといい、資産価格にも悪影響が及ぶと警告する。

「みんな金利急騰を無視し、たいしたことないと決めつけている。
減税と財政刺激策でカバーできるという言い訳だ。
金利が上昇するかの現実は、刺激策とは関係ない。」

では、金利上昇によって米経済が悪化すると見ているのだろうか。
そうではない。
シフ氏は金融緩和はやめられないと読んでいる。

「トランプも下院共和党の誰もが、非難されたくないから(変化を)望まない。
いつものことだ。
トランプ政権の閣僚に見識のある人がいても、この力学に変化はない。」

インフレ予想が高まりつつある中で、金融は引き締められない。
結果、「インフレは考えられているよりはるかに上昇する」との予想に行き着く。

シフ氏は、仮にクリントン候補が勝利していたとしても株価は上昇しただろうという。
選挙前トランプ勝利なら株が暴落すると言っていた人たちが今株を買っている。
市場がバブルだとFRBを非難していたトランプ次期大統領も今では、株高は自分への信認の表れだと喧伝している。

「ちょっと待て。
もしもトランプ当選前に(トランプが言っていたとおり)市場が巨大で太った醜いバブルであったなら、そしてそこから市場がさらに上げたとしたら、より巨大でより太ったより醜いバブルなんじゃないか?」