ビル・グロス:過剰な希望に基づく資産価格

債券王ビル・グロス氏の今月の月例書簡は興味深いアンケートで始まる。
FRBの金融政策を批判し、資産価格の持続可能性に疑問を呈している。

「1) かわいがっているペットと無名の人間のいずれかを殺すよう強いられたら、どちらを殺す?」

10年前に米全国紙USA TODAYが行ったアンケートをグロス氏は真っ先に紹介している。
大多数が人間を殺すと回答したという。
グロス氏の文末には「!」(感嘆符)がついている。
さすが気軽に他国を爆撃する国の国民は違う。
アメリカ人は真珠湾を宣戦布告なき攻撃とみなし卑劣な犯罪と考えているが、最近の米国を見ると完全に客観視のできない《自己中毒》の国になったようだ。
この《自己中毒》こそ、グロス氏が今回イエレンFRB議長に突きつけた批判である。

先進各国で生産性の伸び悩みが問題になっている。
米国の過去5年の生産性はわずか0.5%。
リーマン・ショック前の「”Old” Normal」時代には2%を超えていた点をグロス氏は紹介する。
この生産性の低下についてイエレン議長は「誰も実際に答を知らない」と語ったが、グロス氏はこれこそFRBの自己中毒だという。
イエレン議長は経済モデル予測の的確さにおいて評価の高い経済学者だ。
しかし、グロス氏は過去5年間、経済実態がFRBモデルから3σも乖離している点を指摘する。

「イエレン議長はただただ古いモデルにしがみついている。
誰も実際に答を知らないと主張する、教育は受けているが『常識』に欠けるスタッフにしがみついている。
議長は過去の古い経済モデルにとらわれた頭をもっと働かすべきだ。
他の組織が取り組む中に答や解決策があるかもしれない。」

グロス氏はいくつかの仮説を紹介する。
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  • ノースウェスタン大学のRobert Gordon教授
    「電化や20世紀の技術から得られた恩恵など『低いところになっている果物の実』を獲り切ってしまった。」
  • IMF
    「金融危機の産物」であり「企業投資・通商の鈍化と継続する低・マイナス金利が、低リスク・プロジェクトへ資本を不適切に配分し、小企業の創出を鈍化させた。」

前者はFRBの責任ではないだろうが、後者には責任の一端がある。
だから、グロス氏はイエレン議長に対して辛辣なのだ。
グロス氏は、投資家にこうアドバイスする。

「株式市場はあまりにも高い希望によって値付けされている。
ハイ・イールド債市場はあまりにも高い成長をもとに値付けされている。
すべての資産価格は人為的な水準まで押し上げられた。
モデルにとらわれ、過去のバイアスのかかった投資家は、過去6年間あるいはリーマン危機前の数十年のようなリターンが得られると考えているようだ。
高成長とそれをもたらす生産性は、過ぎ去りし時代からの遠い思い出となりそうだ。」