ビル・グロス:投資できるものがない

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債券王ビル・グロス氏が、中央銀行の生み出した世界的な投資難を嘆いている。
中央銀行は民間信用をより重視したモデルで金融政策の舵取りを行うべきと主張している。

「今の市場はフェイクだ。」

グロス氏がJanus Hendersonのイベントで中央銀行の人為的な市場操作を指摘したとReutersが伝えている。
こうした金融政策が資本主義を歪めているとの主張だ。
グロス氏によれば、今月から始まるFRBのバランスシート縮小は状況を改善し、米国債利回りは上昇に向かうが、そのペースは極めて緩やかなものになるだろうという。

中国や韓国のようなリスク・トレードの典型的市場でさえ、社債スプレッドは極めてタイト(小さい)だ。
世界の市場には投資に値するものがない。
全てがタイトで、フェイクの中から勝ち馬を探すのは難しい。

この状況はもちろん日本にも当てはまる。

シングルA格(R&I)の社債スプレッド(4年)
シングルA格(R&I)の社債スプレッド(4年)

日系格付会社のシングルA格なら、世界大手に引き直せばトリプルB格あたり、つまり世界基準での投資適格の最下層の格付だ。
その格付の9月末時点の平均の社債スプレッドが0.34%。
つまり、100貸して0.34しか回収し損ねることが許されないのだ。
ちなみに、出来上がりの利回り平均は0.24%にすぎない。
つまり、100貸した場合の回収し損ねを0.24未満に抑えないと、この投資から会計上の利益は出ない。

日系格付会社のシングルA格でも、立派な会社は多い。
そうした企業群がデフォルトを起こす可能性は相当に低い。
しかし、それは現状のジャブジャブの金融環境を前提とした話にすぎない。
経済や市場が風邪を引いた時にも、ほぼ100%の回収を約束してくれるものではない。
みんなが背伸びしている市場では、どこかに綻びが見えると、みんな一斉に危機を避けるためにしゃがみこんでしまうかもしれない。

グロス氏は「異常な金融政策の時代」にはテイラー・ルールやフィリップス曲線のような伝統的なモデルに依存し続けるべきではないと繰り返した。
こうしたモデルには市場の視点が欠けており、経済における民間セクターの信用創造が加味されていないためだ。
グロス氏は以前から、短期・長期の債務サイクルを考慮するレイ・ダリオ氏の経済モデルを用いるべきと主張している。