バーナンキ:バランスシートは縮小しなくていい

ベン・バーナンキ前FRB議長は自身のブログで、量的緩和政策により膨張したFRBのバランスシートの正常化について論じている。
ヘリコプター・ベンの異名通り、柔軟かつハト派的な議論を展開し、バランスシート縮小は急がず、縮小の幅も小さくていいと主張している。

急ぐべきでない

FRBは当初から金融政策の正常化について、利上げ後のバランスシート縮小を予定していた。
2015年12月に第1回目の利上げ(25ベーシス)に踏み切り、2016年は4回を予定していたが実績は12月の1回(25ベーシス)のみ。
政策金利の正常化の道は遠い。
そうこうするうちに、FRB高官の中には利上げだけでなくバランスシート縮小について言及する人が出てきた。
当然ながら、市場は、意外に早くバランスシート縮小が始まるのではと推測する。
今回のバーナンキ氏のブログは、そうした観測を打ち消そうというものだ。
大きく観点は2つ:

  • バランスシート縮小は急ぐべきでないこと
  • あるべきバランスシートから考えて、縮小すべき幅は大きくないこと

こうした観点をバーナンキ氏は周到に議論している。

バーナンキ・ショックの苦い思い出

バーナンキ氏は、FRBが思い描くバランスシート縮小を代弁する。

「バランスシート縮小を始める時は、受動的(保有資産を売却せず、再投資を縮小すること)かつ、予見可能なやり方で行うことで、政策のコミュニケーションを容易にし、市場が混乱するリスクを最小限にできる。」

バーナンキ氏には苦い経験がある。
2013年のバーナンキ・ショック(taper tantrum)だ。
バーナンキ議長(当時)が資産買入れの縮小(テイパリング)に言及しただけで、金利は急騰し資産価格は急落した。
これは、市場が誤って議長発言を早期テイパリングのシグナルと捉えたために起こった(と少なくともバーナンキ氏は言っている)。
こうした市場混乱を招かないために、バランスシートの縮小は一定ペースで行うべきとバーナンキ氏は言う。
安易に始めてしまい、様子を見ながら行ったり来たりすれば、市場はそのたびにシグナルが変化したと右往左往しかねない。

これを防ぐには、バランスシート縮小を一定のペースに保つこと。
バランスシートを縮小し終えるまでは、政策金利を金融調節に使うことになる。
そのためには、縮小を開始する前に政策金利を十分にゼロ金利近傍から引き離しておく必要がある。
バランスシート縮小という未知の試みの中で、環境悪化に十分に対応できるだけの利下げ幅を確保しておきたい。
だから、バーナンキ氏はバランスシート縮小を急いではいけないと言う。

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