バーナンキ:ゼロ金利転落に潜む謎

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ベン・バーナンキ前FRB議長が自身のブログで、今後のゼロ金利制約の可能性について検証している。
米金利がゼロ金利に逆戻りする確率について、FRBと市場とで大きな予想の乖離が見られるというのだ。

中央銀行は経済の山谷を平準化するため金融政策を行う。
景気の谷では経済を刺激するため利下げをするが、この時、政策金利がゼロ近傍に達してしまうとそれ以上の利下げが難しくなる。
金利をマイナスにまで下げると、マイナス金利に直面した経済主体は現金保有を考えるからだ。
マイナス金利は現金の保管コストと釣り合うところまでしか効かなくなる。
そこで各国中央銀行は量的緩和を行ったが、バーナンキのジョークで明言されているように量的緩和には理論的根拠はない。

大規模な量的緩和をはじめにスタートさせたバーナンキ前議長が、FBRのMichael KileyとJohn Robertsの論文を紹介しつつ、将来のゼロ金利制約の発現確率を説明している。
米経済がめざましい回復を示してきた中で、米社会あるいは世界は、米経済がデフレ・超低金利から脱したと考えているようにも見える。
異常事態はもう過去のものだ、というわけだ。

バーナンキ氏が今これを議論するのは、デフレは別としても、超低金利は今後も続くとの危機感だろう。
なぜこれが危機感かと言えば、不況時に超低金利となれば再びゼロ金利制約に直面することになるからだ。
その度に量的緩和をやっていれば、FRBのバランスシートは膨張の一途をたどり日銀の二の舞になってしまう。

ゼロ金利に逆戻りの確率は30-40%

バーナンキ氏はカイリーらの論文で設定されている2つの仮定を説明する。

  • 金利水準
    経済が正常化し金融政策が中立的になったとしても過去より低い金利が継続する。
    具体的には、正常な実質金利を1%と仮定し、インフレをFRB目標の2%とすれば、名目金利は完全雇用・物価安定のもとで3%程度となる。
    正常な名目金利が3%しかないとすれば、ゼロ金利制約が再来する可能性は高くなるのだろう。
  • 金融政策
    FRBの金融政策は過去と同様のレベルか、あるいはテイラー・ルールに従う。
    前者の場合ゼロ金利制約の発現確率は32%、後者だと38%。
    いずれの場合も平均のインフレ率は1.2%、GDPギャップは1%。
このような仮定をもとに、カイリーらの結論をバーナンキ氏が代弁している。

「経済環境と金融政策の実施についてのある仮定のもとで、短期金利がゼロ近傍(つまりゼロ金利制約)になる可能性は30-40%もあり、これはほとんどの先行研究より高い割合になっている。
もしもこれが正しいなら、この結果は、将来の金融政策の効果をどう維持すればいいか考え直す必要があることを再提起している。」

(次ページ: インフレ予想の謎)