RMB, Chinese Yuan

バリー・アイケングリーン:アジア危機のタネ

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IMFのシニア政策アドバイザーなどを務めたUC BercleyのBarry Eichengreen教授が、アジア通貨危機から20年を経たところで同危機を振り返っている。
淡々と綴られた論文がサプライズのある結論に導かれており、楽しめる内容となっている。

「1997年、中国はまだ(アジア)地域における役割が明確でなく、日本が提唱するアジア通貨基金に対しても支持を表明しなかった。
中国の支持がなかったことで、結局その提案は封印されることとなった。

その後、中国が自信を深め、リーダーシップを発揮したことが、地域の機関創設や協力を進める助けとなった。
20年間の中国の急成長を背景としたこの変化こそ、危機以来アジアに影響を与えた最大の変化であった。」

アイケングリーン教授はProject Syndicateで、アジア通貨危機が発生した原因を説明し、当時と現在では状況が大きく異なる点を指摘した。
その最も大きな相違点が中国の成長だというのである。
教授はこれを含め、4点の相違を挙げている。

  • アジアの国々が高成長一辺倒の経済政策をやめ、比較的現実的な成長目標を掲げるようになった。
  • アジア各国の為替制度が柔軟化された。
  • 経常収支の黒字化が進み、外貨準備が積み上がっている。
  • チェンマイ・イニシアティブや中国主導のAIIBなど地域内での協力の仕組みが出来上がってきた。

これら4つの変化を見る限り、米国が金融引き締めを進めたからといって、すぐさまアジア通貨危機が再来するようには思えない。
今では危機再来を危ぶむ声は少なくなった。
ところが、問題の種は東南アジアだけではないというのがアイケングリーン教授の考えだ。

「もしも中国の台頭が変化を意味するならば、それは同時に同じままであることも示している。
中国はいまだに成長率を優先するモデルに固執しており、目標達成のために高い投資に依存している。
政府は経済のエンジンを動かし続けるのに必要な流動性供給を続けている。
これは、タイがアジア通貨危機前にやっていた危険な方法を思い出させる。」

中国が世界第2位の経済となった頃から、私たちは中国が出遅れていた社会・経済であることを忘れ始めた。
思い起こせば、中国は東南アジア諸国などと比べ大きく出遅れた社会・経済だった。
今でもその片鱗は各所に見受けられる。
経済政策、為替制度、資本規制、・・・
新興国としては立派なものであっても、世界第2位の経済としては随分と遅れているのが実態だ。

アジア通貨危機に際して、アジア版IMF(いわゆるアジア通貨基金)設立のため奔走した榊原英資財務官(当時)も、東南アジアが危機時とは比べ物にならないほど頑強になったと語っている。
その一方で、中国発の危機の発生までは否定していない。

アイケングリーン教授は、この素朴な事実を読者に突きつける。

「中国は今、20年前の東南アジアの近隣国と同じ地点に立っている。
当時の近隣国と同じように、続けてきた成長モデルを続けられなくなるほど大きくなった。
中国の指導者がアジア危機を勉強していることを祈ろう。
さもないと、中国は歴史を繰り返す運命になる。」