スティグリッツ:格差がカオスをもたらす

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ジョゼフ・スティグリッツ教授が、ダボス会議出席中のスイスでNHKのインタビューに応えた。
グローバリズムと格差、トランプ次期大統領の政策について厳しい注文をつけている。

スティグリッツ教授は冒頭から、トランポノミクスは成功しないとバッサリ切り捨てている。
トランプ氏の主張する極端な保護主義・孤立主義が、永年かけて築いてきた国際的な法や経済の秩序を壊し、結果が弱者にしわ寄せされると心配している。

「アメリカ国内の物価は上昇し、安価な輸入品を買って生活している人たちは衣服やテレビなどすべてのものが大幅に値上がりする事態に直面することになります。」

関税は輸入品の物価を上げるだけでなく、国内市場の供給不足から国内製品の価格も上昇させる。
これは、グローバル化で得られていた恩恵が失われることを意味する。
グローバル化を逆回転させて一番困るのは弱者だと、教授は以前から声を大きくしていた。
そして、弱者をいらだたせるのは物価上昇だけではない。

「彼が提案している税制によって、国民の間の不平等もさらに広がり、その結果、大きな混乱(カオス)が起きると思います。」

教授は、トランプ減税が格差拡大を招く点も以前から指摘していた。
ここでカオスと表現されているのは、経済的混乱ではなかろう。
普通、経済的混乱は減税によって起こるものではない。
ここで起こるカオスとは政治的・社会的なものだろう。
2011年から始まった「ウォール街を選挙せよ」デモのようなものを想定しているのではないか。

スティグリッツ教授は、グローバル化の恩恵と弊害の受け手に偏りがあったと指摘する。
そして、その点に世界の指導者が配慮を欠いたと悔やむ。
得をした人から損をした人への再配分が十分行われず、社会の格差を拡大させたという。

「グローバル化が大きな支持を得るためには、勝者に課税し敗者を救済しなければなりません。
それを実行すれば、全員ではないにしても、より多くの人を勝者にすることができます。」

スティグリッツ教授は、グローバル化のメリットも認めているから、グローバル化を反転すべきとは言わない。
むしろ、いびつなやり方で反転させれば、格差はさらに拡大しかねない。

「トランプ氏のやり方で不幸にもグローバル化の流れを逆に戻した場合、より多くの人が負け組になってしまう。
グローバル化の歪を受けたアメリカの中間層の人たちが、今度はトランプ氏の政策でさらに苦しめられるのではないかと私は懸念しているのです。」