スタンレー・フィッシャー:金利が下がりすぎた時

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今月辞任するスタンレー・フィッシャーFRB副議長が、FRBの金融政策について回顧している。
金融緩和は雇用を改善したが、投資・成長は十分に促進しなかったとし、ケインズの『一般理論』を読み返すよう勧めている。

(1:56頃より)

私はまだインフレが上昇すると信じている。
基本的なメカニズムは、失業率が下がり、賃金がある時点から上昇するということ。
私を含めて多くの人が経験したことだが、だいたい何かが実現するまでには予想外に時間がかかるものだ。

フィッシャー副議長はBloombergで、FRBの金融政策が直に2%物価目標の達成をもたらすと自信を示した。
金融緩和が雇用、賃金を通してインフレをもたらすのは単純なメカニズムであると指摘し、ほぼ完全雇用が実現し賃金上昇も始まっている今、それがインフレに波及するのも時間の問題だという。
FRBの金融緩和は確かに失業率を押し下げた。
しかし、それでも100点満点からは程遠い。

「低金利は投資を促し、成長を促す。
これは期待したほどには成功しなかった。」

キャスターから、次期FRB議長候補はケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』を読むべきではないかと尋ねられ、フィッシャー副議長は同意している。

「彼らは全部読み直した方がいい。
『一般理論』の最後で、ケインズは金利が下がり過ぎた時に何が起こるか書いている。
今でも読む価値のある本だ。」

流動性の罠について書かれた部分を指したものだろう。
フィッシャー副議長は、低金利の手柄も弊害も知り抜いている。
金融緩和は雇用を改善させたが、流動性の罠に陥ったことで投資・経済成長は十分に改善しなかった。

グリーンスパン時代から、FRBの金融政策には緩和のバイアスがかかっていたと言われる。
グリーンスパン・プットと呼ばれた親・市場の政策は、市場・経済を押し上げるのには寄与した。
その一方で、資産価格の過熱を通して、ブラック・マンデー、ITバブル、サブプライム/リーマン危機など金融安定を脅かす環境を生み出した。
米国のタカ派の中には、こうした現象を排除するためにFRBの裁量を小さくすべきではないかとの意見も多い。
たとえばテイラー・ルールのような政策金利の計算式にしたがって金融政策を決めるべきといった意見だ。
フィッシャー副議長はルール・ベースのやり方のメリットを認めつつ、金融政策の現場ではルールの教条的適用では済まないと指摘する。

「ルールは経済で起こりうるおかしな現象について予測できない。
・・・
ルールは基本的な方向性を決めるガイドラインとしては有効だが、金融政策を厳密にルール通りにやることはないだろう。
方程式を見て、これで決まり、とやるなら中央銀行は要らない。」