ロバート・スキデルスキー

スキデルスキー:偏狭な経済学者の限界

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ケインズ研究で有名な、経済学者で英上院議員のRobert Skidelsky氏が、近年の経済学者の姿勢を批判している。
計量モデル偏重で視野の狭い経済学者の限界は大きく、経済・社会の問題を解決することはできないという。

スキデルスキー氏は、経済学が世界の問題を救えずにいる一因が、経済学者の視野の狭さにあるとProject Syndicateで書いている。
計量モデルに固執する最近の経済学者の姿勢に疑問を呈したもの。
経済学者は経済・社会を「機械」として捉えたがり、経済の問題を数式化することにばかり注意を囚われ、定数・変数の本来の意味を忘れているという。

「(経済学者によれば)経済の効率的状態(一般均衡)は連立方程式の解となる。
均衡からの逸脱は摩擦であり、『単なる道路の段差』となる。
それを防げば、結果はあらかじめ定まり、最適となる。
不幸なことに、機械の円滑な機能を妨げている摩擦は人間だ。」

「道路の段差」とは2005年のイエレンFRB議長(当時はサンフランシスコ連銀総裁)の発言。
イエレン議長は当時の住宅バブルについて「いいサイズの道路の段差」と軽視していた。

人間や社会を幸福にすることを目的としているはずの経済学が、人間を対象としていることを忘れてしまう。
ともすると、人間こそが敵であるとするような扱いを始める。
インフレは最優先の善であるとか、自由貿易は最優先の善であるとか、そうした結論を下しがちだ。
だから、正しいはずの理論さえも人々の支持を受けられず、ポピュリズムの餌食となってしまう。

自由貿易が人々の生活を豊かにするのはほぼ間違いない。
系全体の総需要が足りない場合でも、保護貿易よりましなのはほぼ間違いない。
それでも、保護貿易を支持する人が増えてしまう。
鉄板の自由貿易でさえこうだから、こんにゃくのような理屈のリフレはどうだろう。

「政策決定者は何をすべきかわかっていない。
通常の(そして通常でない)レバーを押したが、何も起きなかった。
量的緩和はインフレを『目標に戻す』と思われていたが、そうはならなかった。
緊縮は、信頼感を回復させると思われていたが、そうはならなかった。」

スキデルスキー氏は、経済学者にインテグリティーを望んでいる。
学校で学んだ偏狭な計量モデルのみでなく、経済学から飛び出るほどの広角な見識を望んでいる。
もともと数学専攻だったケインズが『一般理論』で数式モデルを用いなかったのは「直観」を重んじたためと紹介。
シュンペーターが法学のPhDを持ち、ハイエクは法学・政治学・哲学・心理学・脳解剖学を学んだ例を挙げる。
スキデルスキー氏は、現代の職業的経済学者のことを「賢い愚か者」と表現している。

この話には後日談があるのだが、紙面の都合上、次の機会に譲ることにしよう。