シラー:弱気相場は収益やボラティリティと関係なくやって来る

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資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、過去の米市場の弱気相場をデータで検証している。
それによると、現在の状態は過去13例と共通点を有しているのだという。

現在の米国株市場は、強い企業収益に続く極めて高いバリュエーション、極めて低いボラティリティという見た目に稀な組み合わせで特徴づけられる。
この表面的には相反するメッセージは、米国が弱気相場に向かっている確率について何を示唆しているだろうか?

シラー教授はProject Syndicateへの寄稿で、低ボラティリティと米国株下落について解き明かそうとしている。
そのために教授は「弱気相場」(bear market)を定義することから始めている。
最近のピークから12か月のうちに20%下落した月があることをもって「弱気相場」と定義している。
シラー教授が1871年以来のS&P指数について調べたところ、13回該当する例があったのだという。
1892, 1895, 1902, 1906, 1916, 1929, 1934, 1937, 1946, 1961, 1987, 2000, 2007の各年だ。

シラー教授は、自身が開発したCAPEレシオがこうした弱気相場を予言できるかどうか検証している。
その結果、大戦や恐慌のような極端な時期には予言力は弱いものの、多くの弱気相場の直前においてCAPEレシオは高い数値を示していたのだという。
(これは因果関係を示すとは限らないことに注意。)

Robert Shiller教授によるCAPEレシオ
Robert Shiller教授によるCAPEレシオ

シラー教授は、市場の楽観の原因と考えられる2点を検討している。

  • 企業収益の高い成長: 13例すべてで企業収益の成長率は高かった。
  • 低ボラティリティ: 現在(1.2%)ほどではないが、13例(平均3.1%)でも低かった。

つまり、過去13の弱気相場の直前でも企業収益の成長率は高く、株価のボラティリティは低かったのだ。
シラー教授は、現在が過去の弱気相場13例の直前に似ていると結論している。

「私の分析は思い込みに対する警告になるはずだ。
歴史への不完全な印象によって現在の株式市場のリスクを過剰にとっている投資家は、大きな損失を招きつつあるのだろう。」

教授はこう警告する一方で、優しいフォローも忘れることがない。

「弱気相場がやってきた場合でも、天井で買って底で売るのでなければ、損失は20%未満にすぎない。」

これこそ多くの投資家が強気であり続ける理由だろう。
下げるリスクは確かに怖いが、乗り遅れるリスクも場合によってはそれ以上に怖い。
下げても20%なら、あえてそれをとるという判断はありうる。
ただし、それは20%ならばだ。
今、多くの人が漠然と恐れているのはリーマン危機の再来だろう。

リーマン危機後の各国経済は金融政策によって立派に回復したように見える。
しかし、金融政策とはしょせんは景気を平滑化する安定化政策でしかない。
景気の基調を本質的に改善するような変化は十分に起こったのか。
多くの人が疑問を抱く中、FRBは金融政策を巻き戻そうとしている。
次の底はどれぐらい深いのか、投資家はそれを心配しているのだろう。