ローレンス・サマーズ

サマーズ:労使のバランスを取り戻せ

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ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)がLabor Dayの4日「米国はかつてなく組合を必要としている」と題するブログを公表している。
賃金が上がらないから組合をという主張は猿知恵のように聞こえるが、実際にコラムを読んでみるとサマーズ氏(あるいは代筆者)の緻密さと説得力に驚かされる。

この1年、平均時給は2.5%上昇した。
これに対してS&P 500構成企業の利益は年16%上昇した。

これがサマーズ氏の呈示する素朴な疑問だ。
企業収益は改善しているのに労働への分配は十分でない。
この現象についてサマーズ氏はいくつかの原因を挙げている。

  • 前年比の変動による錯覚
  • 時給は国内、企業収益は海外分も含んでいる
  • 労働市場の引き締まりによって新たな労働参加が増えた

企業側の変化としては

  • 企業が賃金に対する支配力を強め、労働者が失った
  • 技術革新による海外へのアウトソース、自動化、効率化

労働者側の変化としては

  • 経済的事情等で転職するのが難しくなった

このように崩れてしまった労使間のパワー・バランスを、サマーズ氏は労働組合によって改善するよう提言しているのだ。

「今日、民間セクターの労働者のわずか6.4%しか組合に所属していない。
1970年代終わりから2/3近くも低下している。」

日本について平成28年の厚生労働省の統計を見てみると、雇用者数57.4百万人に対し労働組合員数9.94百万人であり、加入率は17.3%とされている。
サマーズ氏の計算とは基準が同じではなく、日本の分母はもう少し増える(加入率は下がる)ものと思われるが、それでもやはり米国の数字は低い。
組合の強化がすべてを解決するはずはないが、確かにここには改善の余地があるかもしれない。

「今は国会議員が労働者でなく大企業との関係を強化すべき時ではない。」

サマーズ氏は、トランプ政権の矛盾を厳しく突いている。
ラストベルトの怒れる白人労働者の支持を受け当選したトランプ大統領。
その大統領が率いる政権は銀行家、投資家、不動産屋、軍閥の連合体だ。
そこに労働者のプレゼンスはほとんどない。

米議会が大企業とロビイストに牛耳られていることは有名な話だ。
そこにも労働者のプレゼンスはほとんどない。
組合の強化は議会に労働者の影響力を呼び戻すかもしれない。

「時価総額が最も大きいのがGMやGEのような企業ではなくAppleやAmazonのような企業である今日、組合の役割は過去と同じには戻れない。
しかし、このLabor Dayに、米中間層とかかわっているリーダーは考えなければいけない。
企業と労働者の力のバランスをとるという組合の基本的機能は米経済にとってかつてと同じように重要だ。」