ローレンス・サマーズ

サマーズ:ロボット税は進歩に対する保護主義

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ビル・ゲイツ氏によるロボット税の提案に対し、ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が「見当違い」と反対意見を述べている。
ロボット税は技術革新を抑制する方向に働き、進歩に対する保護主義のようなものと喩えた。

サマーズ氏はThe Washington Postで反対の3つの理由を挙げている:

  • ロボットだけを取り上げて雇用を破壊するとする理屈が見えない。
    自動販売機、ワープロ、ネット・バンキング、自動運転車、ワクチンなども雇用を破壊するのか。
    誰かが線引きできたとしても、IRS(税務当局)に運用できるか疑問がある。
    これは、前回の記事で指摘したとおりだ。
  • 技術を駆使した方法は、より優れた成果を安全に達成する道を開く傾向にある。
    競争があるため、発明者が恩恵を独占することもない。
    課税すべきというのと同様に補助金を支給すべきとの議論が成り立つ。
  • 「全体のパイを大きくするより小さくする課税の方法が、より公正な分配を実現できるというのか。」
    ロボットを作ることで産出が行われ、作られたロボットが人間より多くの産出を行う。
    ロボット税によってその動きを抑制するより、多くの税を得て分配する方がいい。

サマーズ氏は3点目が本質的であり、国際貿易理論の標準であるという。
人間とロボットの間の比較優位というわけだ。

「ゲイツのロボット税は本質において進歩に対する保護主義に陥るリスクがある。」

ロボット税を技術革新に対する国境税調整と言うならそのとおりかもしれない。
しかし、サマーズ氏の論調だと、米国の中間層は納得できないだろう。
そもそも比較優位の考えが通用するのは、潤沢な総需要が存在する場合だ。
この前提がいつまでも成り立ち続ける保証はない。
また、サマーズ氏の言う分配強化は本当に可能なのか。
それが可能なら、旧来の自由貿易についても不満が出ないように分配を強化できていたはずだ。
ゲイツ氏の提案は、課税強化と分配を一体として行うことで、直観的にわかりやすい提案にしたものだろう。

ゲイツ氏の提案は(現実味はともかく)頭から否定するようなものでないように思える。
サマーズ氏は「通常は公共政策に関してビル・ゲイツと同意見だが」と書いている。
にも拘わらず、サマーズ氏を否定から入らせたのは、やはり、反トランプ政権を先導しているという状況だろう。
トランプ政権の保護主義に尖鋭に反対している中で、進歩に対する保護主義を容認できなかったのではないか。

その中で救いなのは、サマーズ氏が弱い者・割を食っている者のことを深く心配している点だ。
コラムでは、政府がより前に出て雇用の問題に当たるべきと書いている:
・教育・再訓練の体系の抜本改革
・賃金補助の検討
・インフラへの大型投資
・政府による直接雇用の拡大
こうした施策は、ロボット税のように技術の進歩を拒絶することなく、推奨することになると主張している。