ケネス・ロゴフ:マイナス金利のための電子通貨

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ハーバード大学 Kenneth Rogoff教授が、次の不況時には金融政策が手詰まりになると警告した。
有効な手段を手に入れるために、マイナス金利政策のための電子通貨の導入を提言している。

概して、フォワード・ガイダンスや量的緩和などの代替的金融政策手段は、ゼロ金利制約に対処する理論的約束を与えてくれる。
しかし、こうした政策は今では用いられてしばらく経つが(日本の場合には20年あまり)、ゼロ金利制約による問題を明確に克服する能力を説得力をもって示せていない。

ロゴフ教授はThe Journal of Economic Perspectivesへの寄稿で、過去の中央銀行の非伝統的金融政策の有効性にダメを出した。

教授はジャネット・イエレンFRB議長が昨年講演で触れたファクトに言及する。
1950年代以降の不況では、FRBは対策のため平均5.5%ポイントの利下げを実施している。
「現在または予見可能な未来にそれだけの余地が生まれるとは考えにくい」と教授は指摘する。
伝統的金融政策に限りがあるなら非伝統的金融政策となる。
しかし、教授の評価では、これまで講じてきた策がゼロ金利制約を克服できていないのだ。

そこで、ロゴフ教授が希望をつなぐのがマイナス金利政策だ。
そしてそのために有効なツールが電子通貨である。

「エコノミストは、今日もケインズの時代と同様、有効なマイナス金利実施は難しいとのふりをするのを絶対にやめるべきだ。
電子決済システムの進化と合法取引における現金使用頻度低下によって、20年前との比較でも今日マイナス金利政策の道が容易になってきている。
本質的に、電子通貨においてマイナス(またはプラス)金利を支払うことに現実的な障害はない。」

電子通貨であれば、時間の経過とともに元本の一定量を増やすこと(プラス金利)もできるし、減らすこと(マイナス金利)もできる。
これまでは預金あるいは日銀準備預金にしか金利は付せなかったが、そうした付利を現金にまで拡大することができる。
預金にマイナス金利を付せばタンス預金が増えるというなら、現金を電子化すればいい。
現金にもマイナス金利がつくなら、タンス預金をする意味はなくなる。

それでも、現金をなくせば困るという人もいるだろう。
ロゴフ教授は、有効なマイナス金利政策のために紙幣を廃止する必要はないと言い、いくつかタンス預金防止法を挙げた。

  • 高額紙幣の廃止
  • 紙幣と準備預金の間にクローリング・ペッグ為替レートを設ける

いずれも理に適った手法ではあるのだが、危機感の高くない国民からすれば現実味を感じられない。
果たして、現金にマイナス金利がつく時代がやって来るのだろうか。