クリストファー・シムズ:インフレ税で軽減しろ

物価水準の財政理論(FTPL)で注目を浴びているクリストファー・シムズ教授が、日本に協調的な金融・財政政策を提案している。
財政拡大でインフレを誘導し、債務の実質負担を減らせというもの。

財政を拡大しろ

シムズ教授はFTPLの趣旨どおり、物価目標実現のためには金融政策だけでなく財政政策も協調させるべきと主張する。
財政政策は欠かせないという考えであり、Reuters

「2014年の消費増税がなければ、もっとうまくいっていた」
「2%の物価目標を達成するまで、消費税率引き上げのような財政緊縮策は取るべきでない」

と語っている。

「期待」という不安

金融政策と財政政策を併用すれば物価が上がるだろうことは何もFTPLを引くまでもなく想像できる。
実際、アベノミクスの初年度はその性格があった。
それに限らず、金融・財政政策を駆使するのはこの四半世紀の日本の十八番だった。
では、FTPLはどう違うのか。
それは、「期待」が重要な役割を果たす点だ。

「財政拡大とは、単に支出を増やすということではなく、人々に債務の一部は物価上昇で相殺されるとの期待を認識させることだ」

との発言からもうかがわれる。

「期待」というと苦い思い出がある。
日本で量的緩和がもくろみ通りの効果を発揮しなかったのは、この「期待」が喚起でなかったため。
ポール・クルーグマン教授は日本の人口動態が「期待」の不発を起こしたのではないかと示唆している。
FTPLは大丈夫なのかとの不安は拭い切れない。

インフレは幸福をもたらすのか?

不安はそれだけではない。
量的緩和の効果が不十分だったこともあり、少なくとも日本ではリフレの実効性に疑問が残っている:

  • 量的緩和はインフレを引き起こすのか?(不十分だった)
  • 仮にインフレになれば、経済はよくなるのか?

この後者についてどうしても確信がもてない人が多い。
この点についてシムズ教授は

「(デフレが経済的に悪であるか)理論的に説明するのは難しい」
「歴史的にデフレが経済成長に望ましくないことは知られている」

と語っている。
こうしたあいまいな話だと、せいぜいトレーダーの迷信程度の説得力しか感じられない。

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