カーメン・ラインハート:トリフィンのジレンマを解く3つのシナリオ

著書「国家は破綻する」で有名なハーバード大学Carmen M.Reinhart教授が、トリフィンのジレンマを解く3つのシナリオを説明している。
長期的な話になるが、米ドルの下落は避けられないようだ。

ラインハート教授は、米国をはじめとする先進各国のGDPの世界のGDPに占める割合が戦後低下を続けているとProject Syndicateで指摘している。
米国のGDPのシェアは18%。
一方、「世界の国の60%以上(世界のGDPの70%に相当)が米ドルを自国通貨のペッグ先に使って」おり、米ドルは断トツの準備通貨なのだという。

2つのシェアの動きが連動せず、むしろ真逆の動きをしており、これがトリフィンのジレンマを引き起こす。
新興国の経済発展で準備通貨としての米ドルの需要は拡大するが、この需要に応えるほどには米国は通貨を供給できない。
準備通貨としての米ドルを供給するには、その米ドルの投資先が必要だ。
行き先を作るには米国に債務を発生させなければならない。
自国経済の成長率より高いベースで債務を発生させることは、財政・金融の不安定化をもたらしかねない。
これを避けるために、米ドルは意図的に、あるいは市場の判断によって減価してきた。
米ドルの減価は、債務者たる米国を救い、対米債権国に損失を転嫁した。

「もちろん、金とのリンクは過去のものだが、米債務拡大を削減しようという米国の財政目標は、準備通貨の唯一の供給者としての国際的役割と相反する。」

現在も米ドル不足は続いていると最近もラインハート教授は紹介していた。
しかも、それが日本人には想像できないような深刻な状況を生んでいる。

米ドルを基軸通貨・準備通貨とする構造に矛盾があり、無理が蓄積する現状は、いつか是正されるのだろう。
ラインハート教授は可能性を3つ挙げ、いずれにせよ中国が大きな役割を果たすと予想する。

  • 持続的なドル安により米国の双子の赤字が縮小し、中国や日本など対米債権国が損失を被る。
  • 高成長を続ける中国が世界経済の成長に必要な準備通貨を供給する。
    人民元が準備通貨となるかもしれないし、IMFのSDRが準備通貨となり、それに占める人民元のウェイトが拡大する形で起こるかもしれない。
  • 米国債に代表される米国の準備資産の需要が低下する。

とりわけ第3の見方は目新しく興味深い。
具体的には、中国の為替・金融の自由化を指しているようだ。

「中国で起こっている継続的な資本逃避は、米国債の需要を急速に大幅に低下させている。
より持続可能なシナリオは、中国がより深みのある国内金融市場とともに変動相場制へと移行し、外貨準備という信用力のある軍資金を蓄えることに依存しなくなることであろう。」

中国が資本規制を維持しても、民間から海外への資本流出が起こり、中国から米国への投資は減少する。
中国が金融・為替市場を自由化して厚みのある国内市場を築けば、外貨準備自体は今ほど必要なくなる。
その時、米ドルへの需要は緩まると考えているのだ。
ラインハート教授の3つのシナリオを見ると、いずれも米ドルの需要低下、つまりドル安が示唆されている。
似たようなことをポール・クルーグマン教授も言っていた。