エラリアン:経済成長と債務拡大のデッド・ヒート

Share

独Allianz首席経済アドバイザーMohamed El-Erian氏が、トランプ大統領の税制改革案についてコメントしている。
内容に一定の評価をする一方、詳細や法制化が重要としたほか、政府債務増加に心配した。

「トランプ政権が(先週)水曜日に示した大胆な税制案の広範な概略は、すでに株式市場が織り込んでいる材料を実現する一歩となった。
この税制改正が議会を通るか否か、それが政権の目標とする『歴史的』で重要な成果に結びつくかは、全般の経済的繁栄にどう寄与するかによって決まる。」

エラリアン氏がBloombergでトランポノミクスの目玉、税制改正への期待について書いている。

米下院は4日、僅差ながらオバマケア代替法案を可決した。
オバマケア廃止はトランプ大統領が3月に議会の説得を試みたが、失敗していたテーマだった。
共和党が大統領府・上院・下院を支配する中での失敗は、その他の経済政策の実現可能性にも影を落とした。
そのオバマケア代替法案がとりあえず下院を通過したことで、税制改正など市場が注目する政策への期待は高まりつつある。
エラリアン氏は、市場がすでに減税を織り込んでいると書いている。
つまり、市場期待に応えて当たり前、失敗すれば下落要因になると示唆しているのである。

エラリアン氏は、トランプ大統領が示した概略について8つの点を指摘している:

  • 税制改正と税率引き下げが言及されている。
  • 税制改正は、簡略化・透明化によって成長の阻害要因を減らし、利益集団の関与を防ぐことを目指している。
  • 税率引き下げは、家計・企業の労働意欲を高め、格差拡大を防ぐことを目指している。
  • 落とし穴は詳細の設計と立法プロセスにある。
  • 詳細はまだ不明だが、適切に設計したからといってスムーズに法制化できる保証はない。
  • いかなる税制改正にも勝者と敗者がおり、多くのロビイストが寄ってくるだろう。
  • 経済成長のために減税が必要かどうかはエコノミストの間でも意見が分かれているが、ほとんどのエコノミストは減税以外の政策も必要と考えている。
  • 減税は経済成長と政府債務の間のレースを熾烈にする。
    「これは結局は現在世代・将来世代に効いてくる。
    仮に経済成長が確固たる勝利を上げれば、トランプが繰り返し目標と語ってきた『持続的な米国の繁栄を築く』との見通しを高める大きな一歩となる。
    しかし、政府債務増大が勝てば、その害を取り除くのに10年とは言わないまでも長い年月を要する。」

最後の論点は、米国が日本化するのか否かというものだろう。
失敗した場合に10年で取り戻せるとは、何とも甘い見通しのように聞こえる。
この点については、大統領選が始まる前の段階でジェフリー・サックス教授が財政拡大に厳しい見方を示している。

それにしても、減税が格差問題の解決に寄与するなどというロジックが出てくること自体、米社会の傷は深い。
格差問題がトランプ大統領を生み、トランプ大統領が減税で格差縮小を図るというなら、米国の格差問題が(周期的・一時的でなく)よい方向に向かう日は遠いだろう。