エクソンモービル:パリ協定残留を大統領に進言

ホワイト・ハウス

トランプ大統領は先月28日、エネルギー産業の振興・雇用創出を目的とし、前政権が導入した地球温暖化対策規制を見直す大統領令に署名した。
しかし思わぬところに、反対者がいたようだ。

トランプ大統領は選挙中から、COP21で採択されたパリ協定からの脱退を公約していた。
オバマ政権で導入された地球温暖化対策規制がとりわけ石炭産業を圧迫し雇用を失わせていたとし、新たな大統領令を「歴史的な一歩」と自賛した。
パリ協定の採択は、世界中から驚きと賞賛をもって受け止められていたから、それに逆行しようという米国の動きには落胆する人も多い。

そして、トランプ大統領はまさに背後から意外な一突きを浴びている。
米国を代表するエネルギー企業、世界一の石油会社エクソンモービル。
前社長ティラーソン氏は現在トランプ政権で国務大臣を務めている。
そのエクソンが先月22日、つまり大統領令署名前に、ホワイト・ハウスにパリ協定から脱退しないよう求める書簡を送っていたのが明らかになった。

「エクソンモービルは、気候変動リスク対策の効果的な枠組みとしてパリ協定を支持します。
・・・
京都議定書とは異なり、パリ協定は、先進国・途上国の両方からの放出削減誓約を含む初めての国際的な気候変動対策協定です。
・・・
わが社ではパリ協定の枠組みの中でも、天然ガスなど豊富な低炭素資源や、石油・ガス・石油化学セクターを含む革新的な民間産業によって、米国が競争上有利な位置にあると信じています。」

かつてエクソンは気候変動リスクを否定するようなスタンスをとっていたが、10年ほど前から温室効果ガス排出削減に前向きなスタンスに舵を切った。
現在に至るまで天然ガスの権益や川下産業への投資を積極的に続けている。

「過去10年、米電力セクターは天然ガスの利用を大きく拡大してきました。
こうした利用法では、天然ガスは最もきれいに燃え、最も炭素を使わない化石燃料です。」

先を見越してクリーンなエネルギーに移行してきたのに逆行されてはたまらないといったところだろう。
エクソンの書簡には自社の利益確保の意図が含まれているのだろうが、言っていることは正しいことだ。
素直に称賛すべきだろう。
28日の大統領令はイコール、パリ協定脱退ではない。
しかし、その方向に近づいたのは間違いない。

米石炭産業が息を吹き返したところで、雇用拡大の程度は知れているとの意見もある。
CO2を別にしても、NOx・SOx・煤塵のコントロールを誤れば、そのつけは自国や近隣諸国に回ることになる。
先進国の中でとりわけ鈍いこの国は、自国・自身に問題が降りかからないと事の重要性を理解できないのかもしれない。