【輪郭】物価水準の財政理論FTPLの基本のき

クリストファー・シムズ
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昨年クリストファー・シムズ教授が公表したエッセーが注目を集めている。
金融政策の限界が強く意識された過程で、財政政策の併用を説く物価水準の財政理論(FTPL)が注目を浴びたものだ。(浜町SCI)

小学生にもわかるFTPL

The fiscal theory of the price level自体はとびきり新しいものではない。
1990年代に唱えられた理論だが、2000年代に入って批判を浴び、日の目を見たとはいえないものだった。
日本でも2003年に内閣府が検討した跡が見えるが、慎重あるいは懐疑的な見方が示されている。

シムズ・エッセーは昨年8月に公表されたもの。
論文ではなくエッセーとして書かれており、極めて読みやすい読みものとなっている。

「この分野の既存の文献は、主に連立方程式モデルで書かれており、とっつきにくく、または現実離れしている。
ここではいくつかの個別の政策課題を形式ばらずに議論し、金融・財政政策の協調を現実的なものとしたい。」

残念ながら、シムズ・エッセーを読んでもFTPLが何であるかはわからない。
なぜなら、本質である連立方程式が書かれていないからだ。
かわりに、その連立方程式を使うと、世間のさまざまなトピックスがどう考えられるか、どう予想されるかが書かれている。
その一例が、財政を併用してインフレを起こせであり、インフレ税で国の借金を減らせというものだ。

最近、顧客からFTPLについて聞かれることが多くなった。
以前のヘリコプター・マネーなみだ。
前回は電子書籍にして広く共有したのだが、今回はどれだけ可能性のある話かわからないので、もう少しはしょらせてもらおう。
今回はFTPLの中核をなす「政府債務評価方程式」を紹介し、小学校高学年でもわかるように、その式のもつメッセージを導いてみたい。

一番大切な式は実はDCF

政府債務評価方程式 The government debt valuation equation
政府債務評価方程式
出典: John H. Cochrane論文

M: マネタリー・ベース
B: 政府債務
P: 価格
R: 政府債務の実質利回り(粗利子率の形で書かれている)
s: プライマリー・バランスの黒字
E: 条件付き期待値

まずは、Eや積分を無視してしまおう。
すると、こんなことが見えてくる。

M+B: Mは日銀、Bは政府の借金だから、M+Bは統合政府の借金。
それをPで割るとは、借金総額を実質ベースに換算していることになる。

プライマリー・バランスの黒字sとは国のフリー・キャッシュフローであり、それをRで割り引いている。
右辺は、国についてDCFをやっているということ。

つまり、政府債務の価値は、プライマリー・バランスの黒字のディスカウンテッド・キャッシュフローで計算されるというのが、政府債務評価方程式の考えなのだ。
では、この式を使って、いくつかメッセージを引き出してみよう。

(次ページ: 借金は返すな)