日本銀行

【輪郭】卓越した人物が「誤解を招く」とき

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日銀政策委員会審議委員 原田泰氏が6月29日が行った講演について、誤解を招くようなあった表現があったとして同氏・日銀が謝罪した。
重大であるものの単なる失言騒ぎにすぎないのだが、背景には心配すべき問題が潜んでいるようにも思う。(浜町SCI

「(ナチス・ドイツ総統だったヒトラーが)正しい財政・金融政策をしてしまったことで、かえって世界が悪くなった。
・・・
ケインズは財政・金融両面の政策が必要と言った。
1930年代からそう述べていたが、景気刺激策が実際、取られたのは遅かった。」

Reutersによれば、原田氏は29日の講演でこう述べたとされる。
(同日日銀が公表した講演原稿には記載されておらず、Bloombergはアドリブと解釈している。)
これが、ヒトラーの政策を肯定しているとして国際的な批判を浴びることとなった。
批判を受け、原田氏は日銀広報を通し、こう謝罪を公表したとされる(同Bloomberg報)。

「一部に誤解を招くような表現があったことについては、心よりおわび申し上げたい。
・・・
審議委員の発言に誤解を招くような表現があったことについては遺憾に思っており、こうしたことがないよう、今後とも注意してまいりたい。」

確信犯を匂わせる「アドリブ」観測

ナチスという暗い闇の重大さを日本人は十分に理解できていないところがある。
海外と国内の理解の差が生んだ失言騒ぎだろう。
ただし、最近はやりの失言に対する謝罪を聞いていると「誤解」という日本語の意味が変質してしまったのではないかと思わせるところがある。
そもそも「誤解」という言葉は読んだり聞いたりした者が誤って解釈するという意味だから、責任を読者・聴衆に押しつけるようなニュアンスを拭えない。

Bloomberg記事が今回の失言を「アドリブ」と書いたのは、原田氏の意図を印象づけたかったからだろう。
ヒトラーの喩えが問題を引き起こしかねないのを承知しており、講演原稿には残さない形で「アドリブ」を使った、そうした印象を持った人は多いはずだ。
そして、その観測はおそらく(少なくとも部分的には)あたっているのだろう。
原田氏は、ヒトラーの拡張的金融・財政政策が正しいと心から信じており、その意味で「誤解」など与えていない。
一部に誤解を招く」という言い方には《自分の意見は正しいが、聴く人によっては違う意味に聞こえたのだろう》というような気持ちが透けている。

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