【書評】債務、さもなくば悪魔

アデア・ターナー

英金融サービス機構の元長官で、以前から日本にヘリコプター・マネーを勧めてきたアデア・ターナー氏の著書。
タブーを打破しようという本書は、民間の信用創造を悪とし、それを肩代わりした公的債務にマネタイゼーションを勧める。

元日銀理事の早川英男氏が「解説」の中で「異端の書」と表現している。
ある意味しっかりとポジションを取って書かれた著作だ。
メイン・ストリームのエコノミストにありがちな《バランス感覚のいい》論考ではない。
自身の考えに忠実に、かつタブーを取り払うと「異端」になるのであろう。
ターナー氏の考え(民間の信用創造を廃止せよというくだり)についていけないところはあるが、それでも潔さを感じさせる。
こういう人が金融監督をしたのだから、英金融界はさぞかしやりにくかったろう。

経済学者の過信が諸刃の剣を生んだ

ターナー氏は世界金融危機後の2009年、エリザベス女王が経済学者に質問された有名なエピソードを引いている。

「なぜ、誰も危機を予想できなかったのですか」

すばらしいバランス感覚に満ちたお言葉だ。
学者らはお茶を濁す程度の回答しかできなかったが、ターナー氏は背景に経済学者の過信・偏向があると考えている。

「金融理論は人間が合理的で金融市場は効率的だと想定し、マクロ経済学は金融システムの細部をほとんど無視していた。
そのため、金融システムを高度化すれば経済はさらに効率化するはずであり、低インフレが達成されているかぎりマクロ経済は安定するはずと考えられた。」

しかし、実際の人間や金融市場は経済学者が想定していたようなものではなかった。
結果、金融システムの高度化は諸刃の剣を生み出してしまったのである。

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