【書評】アニマル・スピリット

2人のノーベル経済学賞受賞者がリーマン危機後の2009年に上梓した本。
今こそ、この本を読むべき時かもしれない。

著者のジョージ・アカロフ(ジャネット・イエレンFRB議長の旦那さん)は2001年に、ロバート・シラーは2013年にノーベル経済学賞を受賞している。
別々にノーベル賞を受賞した2人が一緒に書いた本というだけで、興味を掻き立てられる。

特に、ロバート・シラー教授は今や引っ張りだこだ。
株価や不動産価格の指数開発でも有名な教授はメディアのお気に入り。
史上最高値を試し続ける米国株市場へのコメントを求められる日々。
シラー教授のメディア露出度は米大統領選後さらに跳ね上がった。
トランプ・ラリーが始まったからだ。

トランプ・ラリー開始後、米金融メディアで「animal spirits」という言葉を聴かない日はない。
株高はアニマル・スピリットのためではないかとの声が多く聞かれる。
では、アニマル・スピリットとは何なのだろうか。
本書では、ケインズがこの言葉を使った経緯を紹介している。

事の始まりはアダム・スミスの古典派経済学の限界だ。
スミスは「人々が合理的に自分の経済利益を追求する」との前提に立った。
もっともな前提なのだが、それでは失業や景気変動について説明ができない。
これを説明するため、ケインズはアニマル・スピリットという言葉を用いた。
企業家が十分な情報を得られない中で決断を迫られる点に注目している。

「それ(意思決定)は『アニマルスピリットの結果としか考えられない』。
それは『行動への突発的な衝動』の結果なのだ。
それは合理的な経済理論が言うような『定量的な便益に定量的な確率をかけた加重平均の結果』などではない。」

スミスの言うように、経済主体が合理的な判断だけを行うのであれば、経済は最適水準に収束したままのはずだ。
しかし、現実には合理的な判断を行えない・行わない場面も多く、それが最適水準からの逸脱を引き起こす。
こうして、経済に循環が起こるのだ。

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